統計学を初めて勉強したのは確か大学一回生の授業だった。その中で最も印象に残ったことは、全国的な調査でも非常に小さなサンプルサイズで十分意味があるという事実である。確かに、定期的に行われている内閣支持率調査は、最近のNHKによるものではおよそ2500人に質問し、回答率5割程度、すなわち約1200人の意見に基づいた全国調査としている。調査方式は公表されているものではほとんどRDD(Random Digit Dialing)である。ということは日本の有権者数は1億人ほどであるので、電話がかかりNHKの世論調査の対象になる確率はおよそ40000人に1人と考えてよいであろう。
実は筆者は最近の選挙で確率論では考えられない経験をしている。ある時「次の国政選挙で誰を支持するか」とのコンピューター音声と思われる電話があったが、どこが主体で調査を行っているとの説明はないままであった。このような世論調査の対象になったのは初めてでもあり、どのように利用されるか興味も若干あったため正直に自分の気持ちを入力した。ただ、あとで考えると発信元もわからないのにどう使われたかわかるはずもない。しばらくして、次の国政選挙でまた同じような調査主体を明らかにしない電話が来るではないか。筆者は決してくじ運が強い方ではなく、少なくとも宝くじやお年玉付き年賀はがきなどで高額当選の経験はない。16億分の1の確率に疑問を感じて今回はすべて「まだ決めていない」「どちらでもない」の中間的な答えとした。属性に関する質問も正確な情報を入れる必要もないので適当に入力した。更に次の選挙でもまた電話が来た。3回目となるとRDDであるはずがない。さすがに今度はそのまま電話を切った。
こうなると別の興味が湧いてくる。調査元が回答を入力してくれた番号へ何度もかけることにしているのか、どこかの組織による継続的な思想調査か、はたまた新手のアポ電か。いつぞやの選挙でマスコミの事前予想と実際の結果に大きな乖離が認められたこともあった。その原因が実はこのような調査の信頼性の問題かもしれない。しかしこんな電話が何度もくるということは、電話番号は0120で始まるものが示されていたが、氏素性のわからない発信元不明の電話にもかかわらず、勝手にマスコミのRDDだと思って最初に回答してしまった自分に責任があるということであろう。賢明なる諸兄姉は私のような行動はお取りにならないと思うが、他山の石として頂ければ幸いである。まもなく統一地方選が行われる。電話があってももちろん回答するつもりはないが、さて今回もかかってくるだろうか。
理事 萩原 聡