医療保険制度の議論が活発である。肩代わり問題や保険者の一本化・一元化について、識者や学者、政治家、組織団体の方など多くの方が、論じられている。 もっともな話のように思えますが、気になるのは、聞き手側である現場の保険者責任者の課題に対する熟知度や考え、また、国が進めてきた今までの施策の妥当性やそれを遂行する行政としてのリーダーシップや実行力がどれほどのものか、把握、理解した上で論じられているのか、すこぶる疑問に思います。
先日もある総会で業界組織団体責任者の方が方針として「大きな赤字の中、理屈の通らない肩代わり問題は断固拒否」「支持してくれる国会議員が必要なので健政連に加入(議員への支援金)をして欲しい、手土産がないと議員は話も聞いてくれない」と力説していらっしゃいました。 おっしゃることに何か違和感を感じるのは私だけでしょうか? 保険者の責任者は2~3年で異動します。社会保険制度について多くの方が理解しているとは考えられません。業界組織団体本部の役割として現象を捉えてのメッセージや活動も大切だと思いますが、各保険者に、そもそも社会保障とは何なのか、皆保険制度とは、医療保険制度の全体像や歴史的背景など根本理念を理解できるよう常日頃から伝えておくことも大切だと思います。 保険者も人の意見に振り回されることなく、しっかりと学び、情報を整理し自分の頭で考え、公法人として判断することができることが、大切だと思います。
また、別のシンポジウムでは、国会議員の方が、「保険者は一本化・一元化にしていくべき」「県が中心となり地域医療計画などとリンクさせ進めていくべき」と声高におっしゃっていました。 理屈では、それが美しいと思います。また、そうなっていかざるをえないのではと思います。 しかし、県のどんな人が責任者として組織をマネジメントをするのでしょうか?
一例ですが県単位で健康づくりを推進しようと「保険者協議会」が、行政指導で各県に4年前設置されました。国保、協会けんぽ、被用者保険、医師会、看護協会などが参加し、まさに、県が中心になって推進する事業です。 しかし、どれほどの県が取り組み、どれほどの成果画が上がっているのでしょうか? 4年間、兵庫県で委員をさせていただき、国の施策や支援の仕方、県のリーダーシップのあり方など、一本化・一元化の際に現実的な対応、組織マネジメントについて、多くの課題があることを経験しています。
以上のようなことから、いつもの持論ですが、やはり「保険者マネジメントのプロを育てる」専門大学院の設置が必要だと思います。 健康や医療、福祉について携わる責任者は、たまたまの人事異動で職に就くというのではなく、「保険者の仕事は、加入者を幸せにすること」にあると使命感を持った保険者マネジメントのプロの育成が急務であると思います。