コンプライアンスが広がりをみせています。
コンプライアンスは、一般的に法令遵守と訳され、健康経営においても、その基礎をなすものとして位置付けられています。
従来コンプライアンスとして問題とされてきた「法令」は、いわゆるハードローたる法律(国会で制定されたもの)、命令(国の行政機関で制定されたもの)を意味するものでした(産業保健で特に問題とされる「法令」として、労働安全衛生法が法律、労働安全衛生法施行令や労働安全衛生法施行規則が命令にそれぞれ該当します)。
ところが、最新では、法的拘束力のないガイドラインや指針などのいわゆるソフトローも含めてコンプライアンスの問題が議論されるようになってきました。これは、SDGsをはじめ、様々な社会問題に対する企業の取組み状況が消費者や投資家の消費行動、投資行動に大きな影響を及ぼすようになり、企業活動においては、単にハードローたる法律や命令を遵守するだけでは足りず、法的拘束力のないソフトローの遵守をも求められている結果と言えます。
「コーポレートガバナンス・コード」をご存じでしょうか。東京証券取引所が定めた自主規範でソフトローの典型ですが、とりわけ上場企業にとっては会社法と並んで、あるいはそれ以上に実務においては重要な意味を持つものです。コーポレートガバナンス・コードは、2015年に公表され、その後、2018年及び2021年に改訂されて現在に至っていますが、特に2021年の改訂において新たに追加された補充原則2-3①は、健康経営の立場からも重要な意味を持っています。すなわち、そこでは、「…従業員の健康・労働環境への配慮…など、サステナビリティをめぐる課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつなげる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべきである。」と述べられているのです。健康経営の意義そのものに言及しているものと言えるのではないでしょうか。
コンプライアンス、すなわちハードローのみならず、ソフトローの遵守を基礎に、健康経営を推進し、持続的な企業価値の創造、向上に努めたいところです。
以上、コンプライアンス担当からの一言でした。
副理事長・山田 長伸