理事雑感

各理事の活動の状況や健康経営についての考えを披露。

200931OCT

リーマンショックの影響

2009年10月31日(土) 理事 鍵本伸明

リーマンショックを契機に始まった経済危機からメンタルヘルス悪化が憂慮され、今年3月には厚生労働省より、「当面のメンタルヘルス対策の具体的推進について」と題して取り組むべき事項について都道府県労働局長宛に通達している。特にその具体策は「労働者の心の健康保持増進のための指針」に基づき、個々の事業所の実態に即した取り組みを着実に実施させることを基本的な方針として明記してある。

しかし現場の実態はどうであろうか? 少なくとも私がメンタルヘルスで関わっている事業所で新たな取り組みは行われてはいない。むしろ今まで行われていたメンタルヘルスの研修会が延期や廃止になったり、嘱託の相談日数を減らすなど予算が削減されている。

にもかかわらず、私が関わっている企業内では明らかにメンタルヘルス不調者が減少してきている。 当初は理由がわからなかったが最近、景気の悪化で労働環境が様変わりしていることに気がついた。

リーマンショック後、メンタルヘルス対策を意図したわけではないだろうが、トップダウンで残業規制が強力に行われ、管理職以外、大方の社員は残業時間が減少している。業種にもよるだろうが、企業によっては一時帰休の措置をとらざるを得ないところもあり、仕事がないために残業をしてはいけない状態になっているのである。

景気の悪化で経営者の悩みは深いと思うが、従業員の方は残業がないことでメンタルヘルスは向上している。

2006年の景気がまだ良いときに「長時間労働者に対する医師の面接指導」が法的に事業者に義務づけられた。面接指導の場合は医師が時間管理を指示しても業務量自体が減らないので本人が楽になっても他の同僚に仕事が振られて、本人も同僚も納得がいかず医師も対応に限界を感じていた。しかし今回の残業規制はトップダウンで全社員に対する規制なので誰も罪悪感を抱かず堂々と早く帰れるのである。

産業メンタルヘルスは企業のトップダウンが重要と言われているが、現場で保健スタッフが努力してもメンタルヘルス対策に無力感を感じることもあった。しかし今回の経済危機で組織をあげての取り組みであれば、単に時間管理だけであっても、メンタルヘルスにすばらしい成果があがることをあらためて認識した。